2015/11/15

(No.2404): クオンタイズから想起


先日、渋谷VUENOSでのdeweyライブの日のこと。
現場へ向かうため筆者の運転するパンダ車にてtaira士と機材を乗せ渋谷界隈を走っていたその車内。過日、拙屑ブログで書いた「(No.2375): 32年前の邂逅(エフオピの音楽師匠的なTくん)」の話をしていたら、そうだ当時の曲もiPhoneにあるから是非とも聴いてくらさいと、1983年の彼の作品数曲をtaira士に無理やり聴かせた。
TR808のリズムに絡まるシーケンスが特徴的で歪みのある金属的なシンセ音でメロディが入る。
「機材はKORG MONOPOLYとRoland TR808とTASCAM244です、これ全部手弾きなんですよー」と自分のことのようにドヤ顔で自慢すると「クオンタイズはされているのですか」とtairaさんが聞いてきた。

そこでハッとした。
TASCAM244はカセットテープを使用した4トラックMTRである。多重録音用テープレコーダーだ。マイクやラインから楽器を弾いた音を録音するだけだ。録音した音を編集することはできない。(厳密には)録音したまま、弾いたままの音だ。「録音」するのだからクオンタイズという概念はない。
現在のDAWの環境は「自然」で「自由」なのだ、とつくづく思った。クオンタイズすることがデファクトスタンダードでむしろ自然なのだ。

筆者の音楽制作歴でいえば、DAWの登場はさほど前のことではない。DAWの普及が始まったのは1990年代の後半から2000年頃だろうか。1990年代の中盤からはRoland VS880のようなハードディスクレコーダーはコンシューマ向けに一般化されつつあったが、コンピュータによるMIDIプログラミングであっても音を記録するときはデジタルにしろアナログにしろ「録音」が基本だった。(この場合はMIDIから楽器が発音されるのでクオンタイズは可能だ)
パーソナルコンピュータの前はシーケンサー自体もハードウエアだったし、さらにその前はシーケンサー自体も高価で一般人には買えない時代だった。1983年当時、シーケンサーなど我々貧乏大学生は買える時代ではなかった。Roland MC-4やMC-8をYMOで使っていて、すげーなーとかかっこいいなーとか垂涎羨望なのだった。


「いや、録音ですからクオンタイズも何もありません。弾いたままです」
「あそうか、クオンタイズなしですか、すごい正確ですね」
「確かにそうすね。この曲、彼とライブでもやったのですが、私は簡単なメロディ担当で彼はこのシーケンスをライブで弾いていました」
「ドラムも手弾きですか!?」
「いや、ドラムはTR808です。ドラムマシンの打ち込みです」

そんな会話から思い起こされた。
そういえば、MIDI出始めということもあったが、彼のシステムではまだMIDIは使えなかった。TR808とMONOPOLYのアルペジェーターの同期は、TR808のトリガ出力をMONOPOLYのGATEか何かに入力して同期を実現していたと記憶する。
当時、ドラムマシンとシンセを同期すること自体がテクノでかっこいいと思っていた。

あと、録音した前の音に同期して別の音を録音したい場合の手法。筆者は後年はSMPTEを使ったが、1980年初頭当時はトリガになるようなキック音を録音しそれをトリガ入力にしてRoland SH101を同期していた。



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