2022/10/01

(No.2620): dewey delta(-f) になった噺 (痔瘻根治手術顛末記 第3話)

 【手術後 手術当日】

手術から30分後と2時間後にそれぞれ体温と血圧の測定がありました。
術後2時間までは飲食禁止です。
看護師さんが麻酔の状態を調べるのですが、2時間後くらいまで足はほとんど動かせません。

2時間くらいしたら看護師さんにパンツを履かせてもらいます。
自分の力だけでは履くことができません。
もちろん寝ている状態で。下半身に力が入らないので身体も起こせないのです。

ちなみにパンツはお尻のガーゼを押さえる必要があるため
ボクサーブリーフ的な密着する下着でないといけません。


腰椎麻酔の感覚を表現するのが難しいのですが。
足の指先あたりは正座してて足が痺れる感覚に近いのですが
なんというか、骨を中心として周りの肉は別の物体な感じなのです。
(たぶん意味わかんないと思うけど)
そして、筆者が一番驚愕したのは手術箇所のお尻は当然として
またぐらを含むその前方部位までもがまったくもって、まったくもって、
まったくもって感覚が無いことでした。
無です。む。ム。
下っ腹までは触ると感覚はあるのですが、
それよりも下が忽然と「無くなっている」のです。
「無」になっているのです。
つまり部位が自分とは別の物体になっているということ。
これは衝撃でした。
何も感じないから、こいつを今ばっさり切られてもわからんぞこれは。とか。
変な向きになったままでいたら後でマズいことになりそうだ。とか。


しかも腰椎麻酔の術後の最大の試練は、
その麻痺状態で5時間以内に排尿しなければならないことなのです。
腰椎麻酔は排尿機能にも影響を及ぼすそうで、
その機能が回復できているかを確認するためだそうです。
さらに翌朝までベッド監禁なので自走してトイレへ行けないため、
翌朝まではベッドの上で尿瓶で用を足さなければなりません。


術後2時間経ったら飲食が可能になります。
ちょうどお昼なのでパンの軽食を寝ながら食べます。
そして、くだんの排尿案件を成し遂げるために
手術前に用意した水のペットボトル(500ml)数本を狂ったように飲みまくります。
曲がるストローで。

看護師さんが尿出ましたかーと見回りに来ます。
「午後2時までには出してくださいねー」とおっしゃるが
「ちょ、この、あの、ここ感覚ないんですけど、これで?出せるんですか?」
「皆さんそうおっしゃいます」笑顔。
「いや、無理でっす」
「5時間以内に出せないと、処置が必要になりますので頑張ってください!」
処置というのは、つまり尿道に管をつっこまれるやつです。くわばらくわばら。
「尿瓶で、ですよね?」
「はい。尿瓶でどうしても無理なら車椅子でトイレですが、先ずは尿瓶で頑張って!」
無慈悲。

水1.5Lを飲み干し、膀胱をぱんぱんにして尿瓶で挑戦するも出ず。
小心者なんですから寝ながら小便とかぜんぜん無理です。

江戸の川柳に
「猪牙(ちょき)で小便千両も捨てたやつ」
というのがあるのですが、猪牙というのは船のことで、
揺れる船の上でもベッドで寝てる体勢でも慣れないと小便なんかできっこありません。

もっとも尿瓶のせいでもありますが確かに排尿感覚機能がまだ麻痺しているようです。
結局、如何ともしがたく午後3時にナースコールON、
車椅子でトイレに行かせてもらい盛大に排尿完了。
看護師さんに「自力で出せてよかったですねー」と肩をぽんぽん叩かれました。

その後もう一度ナースコールして車椅子でトイレに行きましたが、
夜勤交代した看護師さんが他の仕事で大変そうでしたので
夜中は頑張って尿瓶で排尿に挑戦、なんとかできました。
でもそのころにはほとんど麻酔が切れており、
ベッド脇に立って排尿したのでした。

それにしても自分の部位がちゃんと存在している感覚に戻ったときは心底ホッとしました。


執刀医の先生は19時頃に病室へ現れて、手術内容の紙ぺらを渡されて
簡単な手術内容をご説明されて慌ただしく去ってゆきました。
痔瘻根治術の開放術というもので、痔瘻の肛門内原発口と炎症管を
切開開放する手術です。開放箇所は縫わずにそのままです。
場所が場所なので痛く無いわけがありません。

痛さのピークは夜でした。
痛さと、排尿制御とでこの日の夜は1時間ごとに目が覚めました。
疼痛に常時襲われますが、身体を動かすときに、
実は肛門にも力を入れているのだということを激痛を持って改めて実感できました。



 【手術後 手術翌日〜退院日】

翌朝、朝6時の検温後、自走トイレ行きがめでたく開放されます。
夜中に尿瓶でやったとはいえ、検温後速攻でトイレで排尿。


そしてここから術後創傷の疼痛しつつ排便後のさらなる激痛に襲われながら
お尻洗浄+ガーゼ交換などのイベントで丸二日間を過ごします。
とは言うものの各種投薬もあり、痛みをコントロールしつつでしたので、
入院後半はけっこう暇な時間は多かったのです。
ドラクエウォークやったりKindleで本読んだり、院内同フロアを歩き回ったり、
不本意ながらTeamsで仕事関連の打ち合わせしたり。

そして、退院後の生活指導やら注意事項の説明を受けて、
5日目の午前に退院しました。創傷の完治は1ヶ月前後かかるとのこと。


痔瘻根治手術の痛みは実は退院して手術後1週間くらいから痛みが増すとの
情報もあったのですが、情報通り確かに痛みが増しております。
開放術により新しい組織が出来上がってくる過程と認識しておりますが、
「座る」と「座った姿勢から立つ」には時間を要します。
その動作がすんごい痛いのです。でもライブはやるよ。

関係各位ありがとうございました。