2021/08/24

(No.2609): 魔法の仕組み

 昨今Spotifyなどのサブスクで知らなかった数多のエレクトロニック系音楽を聴くことができる。
それらを聴いて改めて想うことは、”音色(帯域)”及び音響技術が楽曲制作に重要な要素を加えているという事実である。

特に音数の少ない楽曲は顕著だ。例えばリズム系とベースのみの曲での、各楽器が聴感上の領域一杯で鳴る存在感の完成度。
けっして、音圧を強調したかまぼこ型波形ではなく、極めてダイナミックスのある波形。(きっとそうに違いない)

そういう曲は、キック、スネア、ベース、グルーヴにつながるハットや小粒な短いディケイシンセ音シーケンスのみでも、十分聴きごたえを感じる。
小さな音も帯域に埋もれずにはっきりとそこに存在し正しく曲の構成の一部となっていることを確認できる。そして、ふくよかな低域に支えられた自然な高域も。
包み込まれる立体感。
各音色が必然と鳴っている確かさ。


誤解を恐れずに言うなら、それほどよいフレーズでなくても、音色(帯域)と音響処理で格好良く聴こえるから不思議だ。

その理由はおそらくエレクトロニック音楽は、演奏や旋律とは別に”音色(帯域)”も一つの表現方法であるからだろうと考えている。従ってこの魔法は概ねエレクトロニック、テクノといった楽曲にこそ真価を発揮するのかもしれない。

筆者は前々からこの魔法の仕組みにとても興味を持っている。


楽曲制作において音を重ねていく場合、その音にのみ注力せず、楽曲全体としてその音の必然を感じとることが重要なのかと思う。音数に限らずこれがこの魔法の肝ではないかと最近得心した。

(一方で不要な音を詰め込む手法で表現することも支持する。敢えて汚すことも重要だし面白い)

難しいのは、制作中は試行錯誤しながら進行するため、音色=帯域のぶつかり具合に無頓着になってしまうことだ。
ベッドルームクリエイターにおいて、せっかく作った自画自賛パートをどれだけ客観視できるか、愛着あるフレーズや時間を掛けて作った音色を目的のためなら容赦なくダメ出しディレクションができるか、だろう。

その辺りをほっぽらかしにして、最後はEQやマキシマイザーで茶を濁すのは文字通り濁すことになると肝に銘じてチョコモナカアイスジャンボを頬張りたい。頬張っていきたい。


2021/08/03

(No.2608): 「アマチュア」とは”素人”のことではなく自由な私的学究のこと(長文)

くだんのとおり40年ぶりの復活に向け環境を整えつつあるアマチュア無線。
無線機もさることながら世界への窓、すなわち空中線(アンテナ)の建設にここ2カ月ばかり奔走しております。

ところで、おそらくアマチュア無線のことをよく知らない読者が多いと思うので、簡単に紹介しておきたいと思うのですが、しかしね君、これは意外と説明が難しいぞ。


アマチュア無線を一言で言うなら「無線を使って世界中の人たちと通信する。」とかになるんだろうけど、こう書くと誤解を生じる感ひしひし。
そして、は?何で知らない人と?キモイ意味わかんないー、世界中?なにそれー、SNS?みたいな?
???となる。
うむ。確かに意味わかんないね。世界中とは言い過ぎか。そしてどこが面白いのだろう。

だって今では一人一台スマホ持ちで誰とでも連絡取れるし、SNSもあるしで、いまさら無線なんて。
だって無線ってつまりトランシーバーなんでしょ?そんなもんなくても連絡できるじゃん。

というご意見ごもっともです。


でも実はですね、アマチュア無線というのは、その目的がまったく違うものなんですよね。
それを的確に表しているなと思ったのは以下の無線通信規則の「アマチュア業務」の定義なのです。

「アマチュア、すなわち金銭上の利益のためではなく、もっぱら個人的に無線技術に興味を持ち正当に許可された者が行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務をいう。」
(ほぼ同様の内容が電波法施行規則第3条第1項第15号にあります)

ちなみにアマチュア無線の「アマチュア」という文言は”素人”という意味ではありません。非営利目的で行う自由な私的学究を意味しています。(wikipediaより)

つまり、連絡の手段でアマチュア無線をやるわけじゃないのです。(そういう時もありますけど)
例えば、この自作アンテナでどこまで電波が飛ぶのかとか、こんな小さな送信電力でどのくらい遠いところと通信できるのかとか、各種アワード(※)を狙ってみるとか、
あるいは外国の局とぐだぐだな英語で交信しまくるとか、モールス通信(CW)による交信でビビりまくるとか、定年間近のおっさん二人が休みを合わせて秋葉原で無線屋で買い物する段取りを雑談しまくるとか、
つまり興味からくる楽しみのためにやるのです。

(※)アワード とは:交信した地域や局数など一定の条件を満たした場合に交付される与えられる証明書・認定書

筆者のような音響的にアレな輩なら、マイクをSHURE57に変えてマイクプリなんかもかましてみようとか、あるいはHF帯の空電ノイズをサンプリングして曲に使ってみようとか。(←もはや無線と何の関係もない)
そんな楽しみ方もできるのです。


まぁ基本的には、誰かと交信することには違いありません。
初めての局との交信は概ね決まった内容で行われます。レポート(信号強度と了解度)の交換、運用場所、名前、QSLカードの交換有無の確認くらいでしょうか。
QSLカードというのは交信証で、無線局それぞれが独自に作るポストカードです。

またアマチュア無線はQ符号というQから始まるアルファベット3文字の世界共通の略語や、独特の言葉使いなんかもあります。
Q符号は例えば、交信のことをQSO、名前のことをQRA、運用場所をQTH、誰かこちらを呼びましたか?はQRZ?
などなど、
あと例えば、「良い」ことを「FB」(エフビー)と言ったり、交信終了してさようならは「73」(セブンティスリー)と言ったりします。


無線局に付与される呼び出し符号(コールサイン)など、アルファベットの言い方に関しては、NATOフォネティックコードを使用します。
「A」はアルファ、「B」はブラボー、「C」はチャーリーというアレです。
ただ、法的に決まっているわけではないので例えば「J」はジュリエットですが、ジャパンと言ったりもします。

自分の無線局に付与されたコールサインは世界に一つです。コールサインで国や地域がわかるようになっています。



さて、上述でも示したアマチュア業務の定義ですが、その中に「正当に許可された者が行う」という一節があります。
”正当に許可された者”というのはつまり、資格取得が必要ということです。
アマチュア無線をやるには、人に付与される無線従事者免許と無線設備に付与される無線局免許の二つの免許が必要です。管轄は総務省の各地域の総合通信局です。

アマチュア無線の無線従事者免許は1級から4級まであり、無線工学及び法規の国家試験に合格しなければなりません。
加えて、実際に無線機やアンテナを揃えて無線局を運用するためには無線局の免許が必要になります。こちらは、無線従事者が送信機や空中線(アンテナ)の仕様を総合通信局へ申請し免許を発行してもらいます。
1級から4級の違いは、主に送信出力の大きさと使用できる周波数です。(4級はモールス符号による通信はできません)


筆者がハマっていた35年くらい前がおそらくアマチュア無線人口のピークだったのかもしれません。最近はだいぶ減ってしまったという話を聞きます。
目的は異なりますが確かにスマホ普及やインターネットがあれば、離れている人とコミュニケーションが簡単にできる時代なので、普通の人は国家試験受けてまで無線なんかやろうとおもわないですよね。

でも、かっこいいんだよー(風で乱れた前髪を直しながら)


ここまでで、けっこう長い文章になっちまったのでやめておきます。
が、まだほんの1ミリくらいしか話せませんでした。
次回「何故アマチュア無線はおっさん人口が多いのか自分も含めてキモいのかなぜキモいのかおいなぜなんだなぜなんだとゆっている」をお送りします。そりでわ。