2022/11/21

(No.2625): dewey deltaライブ 楽屋話(板 編)

広義の電子音楽・エレクトロニック音楽のライブでは
通常、キーボードスタンドに置いたテーブル状の板の上に
各種電子楽器・機材群を並べておくケースが多い。

従って、「板」がなければ機材を置くことができず、
ライブが成立しないのである。概ね。
(注 ステージ床に直接機材を並べてライブするアーティスト様を見たことはある)


一般的にライブハウスの場合、出演者は概ね以下の工程で進行する。
1 入店
2 サウンドチェックまでに機材を組み上げる。
3 サウンドチェック
4 サウンドチェック後ステージ上撤収(機材セットをバラす)
5 本番前 機材を組み上げる
6 本番
7 本番後ステージ上撤収(機材セットをバラす)

ワンマンライブでない限り、サウンドチェック後のバラし、
本番前ではセットを組み上げなければならない。
ケーブル2,3本を挿すくらいの機材規模ならそれでも問題はないが
dewey deltaのライブセットは大型コンテナ3個分である。(雰囲気が)
(なお、ハッチャキさんのフルドラムセットの巻は別の回)

都度組み上げるにはあまりにも時間が足らない。
毎回組んでいたら関係各位にご迷惑をお掛けしてしまう。


であるからして、ライブハウス様や共演者様と調整しつつ、
上表4のタイミングでサウンドチェック時の”組んだままの状態”で
本番まで楽屋やステージ脇にはけておきたいのである。
最短時間で本番セットが組みあがるように。
あと、霊障防止。
慌てて組んだ失敗。枚挙に暇なし。

”組んだままの状態”というのは「板」ごとである。
「板」の上に機材群が展開しているからだ。

ライブハウス様からお借りする「板」の場合
共演者様も使用する場合がある。
従って、”組んだままの状態”が難しいことがある。
こちらの都合で「板」を占有してしまうわけにはいかない。


以上の理由から、当然我々dewey deltaは「板」を所有している。
しかし、上手側「板」は辛うじて使用できているものの、
運搬を考慮した場合の大きさや、一方で
機材変更に伴う「板」の面積不足により、ライブハウス様から
お借りするケースが多い。

そこで、予てから妄想していた現状の不満点などを盛り込んだ
ライブ用「板」を作ることにした。
仕様は以下の通り。
・ 幅1200mm×奥行き450mm → 広いスペース確保
・ 折り畳み式 (折り畳むと 600mm×450) → 運搬考慮



600mm×450mmのボードを2枚、蝶番でつなげる。
蝶番つければ「折り畳める」ってぇ寸法だ。

「板」の厚さが16mmなので、蝶番に付属のネジ(20mm)では突き抜けてしまい
ネジを全て15mmネジに交換48本!!ということもありつつ。

妄想では蝶番だけで大丈夫かと思っていたが、地球の物理現象がそうはさせなかった。
「板」をXタイプのキーボードスタンドに乗せると、蝶番を中心にΛ に折れてしまい
平面にならない。
「板」を開いたときに、その状態を固定させなければならないことに気付く。

どのように2枚の「板」を平面状に固定させればよいのか。
ホームセンターに6時間で5回も通い様々な器具を物色し試みた。
結果的には表側面に写真の「パッチン錠」が一番要件を満たした。
面積を多少犠牲にしてしまうが仕方ない。2枚の「板」は「1枚板」と化した。




結果、妄想通りの「板」となった。



一応、上手側、下手側の2組を製作した。
題して「dewey delta LiveBaseBoard」

重さ10Kgのシンセを乗せても問題はなかった。
ただ、演奏時の加重に対する許容範囲が不明なため、
万が一を考慮し蝶番とパッチン錠の板取り付け箇所に接着剤を塗布しておく予定。





所有の「板」に
Moog Subsequent37 乗せたら入りきらなかったので「板」を自作した。
出来上がった板がけっこう重かった。

2行で済む話だ




2022/11/16

(No.2624): dewey deltaライブ 楽屋話(テクニカル編 第2回)

 dewey deltaライブでのテクニカル楽屋話 第2回 モニターの噺の続き

第1回はこちら

1.3つ股Y字ケーブルの是非

dewey deltaステージモニター環境・バージョン2(第1回参照)は
メンバーの評判も上々である。
しかし、筆者はひとつ気掛かりなことがあった。
すべてのソース音源(上手側の音、下手側の音、クリック)の
3分配という一番重要な機能を安価な3つ股Y字ケーブルで済ませていたことだ。

とはいえ現状、まったく問題はでていない。
しかもtairaさんが予備まで準備しているので万が一断線等になっても、
取り替えればすむことだ。

そうさ、何も問題はないんだ。ぼくはだいじょうぶだ。
スーパーの帰りであろうマイバッグを肩掛けし、
小雨の中を傘をさして家路へと急ぐ母子の後ろ姿を
喫茶店の曇りガラス越しに、ぼくは虚ろに眺めながらひとりごちた。



2.スプリッターを探して

古今東西の音響現場における音源の分配方式について書物を紐解く(ググる)。
どこをどう探しても3つ股Y字ケーブル推し記事にはお目にかからない。
百歩譲って2つまでの分岐だ。
一般的にはスプリッターという機材で音を分配する。

そこで市販されているスプリッター機器を調べた。
調べるにあたっては以下の要件とした。
・ 1入力3出力(多くても少なくてもだめ)
・ ステレオ回線で入出力できる
・ パッシブ動作であること(電源不要)
・ なるべく余計な機能はない単純なスプリッター機能のみ
・ 小型
・ 安価

スプリッターはあまり一般的ではなくどちらかといえば
プロの音響現場で使用されることが多いため、
価格もそれなりであるうえに高機能な製品が多い。
まずもってパッシブとステレオで1入力3出力という要件が厳しい。
もっとコンシューマーチックな製品はないものか、、

と調べていたら、ほぼ上記要件を概ね満たす製品を見つけた。
ミキサー機能も付いているが4出力以外はこちらの要件に適っている。
実売価格は6千円代。見た目も格好良いしまずまずといったところ。
我々のモニター構成としてはこの機材が3台必要になるのだが
もうこれで決めてしまおうとメンバーへのネゴシエーションを始めた。


3.スプリッターを作る?!

今使っている3つ股Y字ケーブルは、電子回路なんかなくて
単純にコードを3つに繋げているだけだよな。
という疑問を持ったので、そもそもスプリッターの回路は
どうなっているのかと興味が湧いてきて書物を紐解いた(ググった)。

一般的なスプリッター機器には概ねアンプ回路が内蔵されている。
これはFETやオペアンプICなど半導体で信号増幅させるので電源が必要だ。
また、インピーダンス変換(インピーダンスが大きく異なる機材同士
を繋げる、例えばギターをエフェクターに繋げる等)機能が
ある場合はトランスが組み込まれていたりする。

筆者の要件はパッシブ回路なので電源がない。
従ってアンプ等は組み込めない。
そもそも目的は信号増幅ではなく、あくまでも単純に音を
3分岐させたいだけなのでパッシブで十分。
というか、何故パッシブ要件かというと、ライブ機材にこれ以上
電源類を増やしたくないからだ。
また接続するソースも全てラインレベルで概ね同じインピーダンスだから
トランスも不要。

そんななか、ダイレクトアウト出力を持つスプリッターの回路図を見たら
案の定、入力信号を単純に分岐させてそのまま出力となっているものを見つけた。
だよなー、3分岐程度ならそのまま分けるだけでいいんじゃん。

その回路図を見た瞬間、スプリッター作るかッというモードに突入したのだった。


4.dewey delta パッシブ・スプリッター製作

回路は単純明快だ。
入力1系統を出力3系統へ分岐させるだけ。
名付けて「dewey delta パッシブ・スプリッター」
dewey deltaライブではこのスプリッターを3台使用するので3台作る。
2台は上手システム音と下手システム音用としてTRSフォンのステレオ仕様、
1台はクリック用としてTSフォンのモノラル仕様とした。

回路図は以下の通り。
※TRSフォン仕様のステレオ仕様の回路図


部品発注は全て「秋月電子」さんにて通販した。便利だ。
ノイズ対策+ライブ使用なのでケースは金属製とした。
数十年ぶりに金属ケースの穴開け作業。
結線用ケーブルは音響用の2芯シールドケーブルを、
はんだはオーディオ用の銀含有はんだにしてみた。






上記製作過程は既にTwitterで公開しているので詳細は省略する。
ひと言。穴あけムズイ。

単体テストでは音質も問題なく良好だった。
ちなみに製作コストは、部品代だけでART SPLIT Mix 4 1台の価格よりも
安価であった。

っていうか、電子工作楽しい。


5.バージョン3モニター環境(テスト未)

いよいよバージョン3モニター環境(下図参照)の稼働である。
3つ股Y字ケーブルの代わりに、
dewey deltaパッシブ・スプリッターを導入した布陣。
まずはスタジオ練習にて動作確認テストを実施予定。





そこで問題なければ
12/9 「Broken Transmission」@新宿WildSide Tokyo
にて現場実践だの。

チケットご予約中! ↑クリック ぜひー


番宣かよ









2022/11/15

(No.2623): dewey deltaライブ 楽屋話(テクニカル編 第1回)

dewey deltaライブでのテクニカル楽屋話
第1回は モニターの噺。


1.モニターとは

モニターとはステージで演者が自分たちの演奏音を聴く仕組みの事。


通常ライブハウスなどのステージには、演者が演奏音を聴くための
コロガシと呼ばれるステージ床に配置するスピーカーや、
上・下手隅にスタンドで立てるスピーカーなどがある。

dewey deltaライブでのステージ上モニターは
dewey時代から自前のモニター環境を使用している。
自前とは、上述のライブハウス側のモニター環境は概ね使用せず、
自分たちの機材でモニター環境を構築していること。
何故自前なのかについては長くなるので別の話し。


2.モニターで何を聴いているの?

さて、モニターというのは演者が演奏音を聴く仕組みであるが
いったい何をモニターしているのか。
dewey deltaライブは以下の音をモニターしている。
・ 上手側システム(エフオピ)からの音
・ 下手側システム(taira)からの音
・ クリック

これらをミックスした音をメンバー3人がモニターしている。
お客様がお聴きになっているライブハウスPAからの音に
クリックが足されている状態と思われるかもしれないが
実際は音のバランスはPA出力とは微妙に異なる。

なお、現在(2022年10月)のモニター環境はバージョン2である。
バージョン1の欠点を補う形で再構築した。


3.クリック

dewey deltaになってからモニターには特にクリックが必須となった。
dewey時代からもクリックは使用していたが、
deltaではハッチャキさんのドラム演奏のガイドとして必須の存在となった。

以前はクリック用トラックを曲ごとに作成していたが、
現在はAbletonLiveに備わっているメトロノーム機能をそのまま使用している。
クリック音をPAへ出さないために、オーディオインターフェイス
(Universal Audio Apollo系)の機能でメインアウト以外の出力から
クリック音のみを出力している。

4.バージョン1モニター環境とは

dewey delta始動時からしばらく続けていたバージョン1モニター環境。
仕組みは以下の通りである。

筆者の手元にモニター用のミキサーを置き、
上手(筆者)の音と下手(tairaさん)の音そしてクリックを入力し、
そのミックスした音をヘッドフォンディストリビュータへ渡し、
そこからメンバー3人へモニター音を分配していた。

つまり、筆者の手元ミキサーでのミックス具合を演者が
モニターしているという状態であった。(図1参照)

図1


この場合、ハッチャキさんから「クリックを大きく」とのリクエストで
クリックの音量を上げると、バックトラックや自分の演奏がクリックで
スポイルされてしまったり、あるいは
バックトラックや自分の演奏音をちゃんと確認したいと思って
筆者の音を上げ過ぎると今度はtairaさん音やクリックが埋没してしまう
といった各演者の良バランスのモニターが難しくなる欠点があった。

このデメリットをなんとか解消したいと思い、
新しいモニター環境を考案したのがバージョン2だ。


5.バージョン2モニター環境とは

キューボックスというのがある。
簡単に言うと主にレコーディングで使用される演者用のモニター用のミキサーだ。
演奏者が演奏しやすいようにオケや自分の音のモニターバランスを
自分で調整できる環境だ。

バージョン1のデメリットを解消するためには、これしかない。
メンバーそれぞれに自分にあったモニターバランスを提供するしかない。
つまりキューボックスをメンバー全員が持つのだ。

そこで考案したのが図2の仕組みだ。

図2

メンバー全員に小型のミキサーを配置。
それぞれのミキサーに上手音、下手音、クリックを入力し、
自分の演奏しやすいバランスを自分でミックスする。
ミキサーのヘッドフォン出力からイヤモニやヘッドフォンでモニターする
といった構成である。

この仕組みの肝は全てのソース音源を3つに分配するところである。
その場合通常はスプリッター(ミキサーとは逆の機能)で一つの
音源を分けるのだが、コスト面で折り合いがつかず、
超安価な中華製3つ股ステレオフォンケーブルなるもので対応した。

意外にもこの製品は優秀でモニターにおける音質劣化もなく
思惑通りに機能してくれた。

実際この構成で数回ライブをおこなった。
手元でモニターバランスを調整できるのはとても演奏しやすい。
ライブへの没入感にも通じ、総じてライブの質も高めている。(と思う)
メンバーの評価も高い。

これでモニター環境はひとまず完了となった。


6.バージョン3モニター環境へと続く

実は筆者は気になっていた。
システムの肝である3つ股ケーブルの耐久性はどうなのだろうかと。
tairaさんは「そのときのために予備を買いました」と。
思わず泣けた。

3分配するところが重要ならやはりそこは正式なスプリッターを導入
すべきではないのか。
スプリッターだ。それしかない。


テクニカル編 第2回へ続く


2022/11/09

(No.2622): ここから先に行きたければ次の問いに答えなさい。(2015年夏期試験 回答)


2015年夏期試験の問題は こちら


問1の回答
求められない。
ツクグロウ鳥が「予兆検知、予兆検知」と啼くときの周波数のことであり、
「忘れ形見の彼処」とは啼かないので814Hzは上限とならないが、
そもそもツクグロウ鳥などという鳥は実在しない。
従って声の周波数も存在しない。




問2の回答
自分はまだ学生(大学8年生で卒業できず退学目前就職も決まっていない)の
身分であるにもかかわらず、息子は小学1年生であるという事実に
社会的居たたまれなさに苛まれる風を装いながら、
実は明日は明日の風が吹く的な「そのうちなんとかなるだろうー」
という気軽な心持の言葉である。

参考文献
「悲しきわがこころ」原曲こちら↓



問3の回答
正解は(2) dewey (デューイ)であるが、初見で正しく読める人が少ないため
(3) deway (デーウェ イ)や(1) bewey (ベウィー)でも正解とする。




問4の回答
(3) おごるぞ

きっと、「おごるぞ」と言いかけて台詞が間違っていることに気付き
慌てて「お、払うぞ」となったとみている。
なお、そのあとの台詞
「そうですかーいやそいつぁわるいなー」
「先輩どうもごっつあんです、いいんですかぁ」
の安田伸さんと犬塚弘さんの言い回しが素敵だ。

参考文献
「こりゃシャクだった」原曲こちら↓

なお、回答選択肢の元ネタは以下の通り。

(1) やんなっちゃった俺ー
「どうしてこんなにもてるんだろう」

(2) まことに遺憾に存じます
「遺憾に存じます」
https://youtu.be/PYt07sju-7g


(4) あんた誰?
あんた誰


2022/11/08

(No.2621): フジロック2022


そういえばフジロックのこと今年はこのブログに書いてなかった
ということに先ほど気付いた。
既に11月になっちゃったけど毎年書いてるので自分のために書いておこう。
記録用に。なんかもう忘れちゃってるけど。

筆者、連続22回目のフジロック。22回ほぼ全通(前夜祭含め)
おいおいドヤ顔をしているよ。



グリーンステージ。この写真は1日目金曜なので人があまり多くなくて快適。
Tシャツ刮目。(筆者近影)



去年に続き今年もシトロエンのブースが。オレンジコートにて。
テントではテクノがかかって小さなクラブになっている。フランスのテクノかな。



今回フェスごはんの写真がぜんぜんなくて、唯一この天国ラーメンだけ撮ってた。
ところ天国にある天国ラーメン。煮干しだしで永福町大勝軒っぽくて美味かった。



グリーン~ホワイトステージ間の道。
ボードウォークとともに夜はライトアップされている。装飾は毎年違う。
20年前とかはこの辺りの森の中でイカガワシイものを売る輩がいたりしたが近年は健全。



ホワイトステージ。ホワイトの低域チューニングは筆者好み。
この写真はたぶんBONOBOを見てた時の。



F.O.H (フィールドオブヘブン)
コロナ前はオーガニック系のお店がまわりにたくさん展開してたけど、
去年からお店の数がだいぶ減った。でもロータスカフェは健在だった。



ところ天国の寄席。今年も鈴々舎馬るこ師匠の高座。笑点の若手大喜利でもご活躍。
フジロックでの落語演目はわかりやすい「時そば」が多い。



最終日の苗場食堂ステージで大トリなのに、昼のところ天国寄席の爆笑ステージにも立つトミー富岡さん。
子供連れのお客さんがたくさんいるところでもいつも通りのヤバ過ぎるエロネタをぶちかます。
下品なエロネタ満載。それを見て笑う僕らも下品。それがいいんじゃない。
子供の手を引いて逃げるようにこの場を立ち去る若いお母さんを多く見た。



最終日の21時レッドマーキー前。MOGWAIのステージ。
このあと、F.O.Hもホワイトもグリーンも終わると、名残惜しむようにレッドマーキーに人が集まる。




最終日、ピラミッドガーデン。知る人ぞ知る逆最深部のステージ。
SILENT POETSのレゲエ・エレクトロニカが流れていた。




SEE YOU IN 2023
SEE YOU SOON




おまけ
最終日に歩いた距離10.04Km