2014/12/15

(No.2282): あのときのラーメンライス(再)


ハタと思い出し、ググってみた。
それらしいものは見つけられなかった。
何をググったのか、というと、
検索キーは T県 K町 ○○ である。
○○に入る文字はある食堂の屋号。
(実はこの話しは以前にも書いたかも
しれないがまた書く)


1983年あたりだから今から30年以上も
前の話しだ。
筆者が大学生だった時のこと。当時筆者は
電子音楽ユニットを組んでいたT氏と鉱泉や
温泉を巡る旅行を頻繁に実践していた。

それは
軽トラックでF県まで旅行したときの事だ。
二人とも360ccの軽自動車ばかりを
乗り継いでいたのだが、
その流れであろう、軽トラックって
格好いいよねーというノリで
知り合いの人から軽トラックを借りて旅行に
繰り出したというわけだった。

その旅行の復路。途中寄ったT県のK町が
まるで、つげ義春氏の漫画に出て来そうな
雰囲気を醸し出しておったので車を停めて
町を少し散策したのだった。

埃っぽい町だったが、葬列に遭遇したり、
不思議な共同便所で大便をしたりと、
本当につげ義春氏の漫画の世界のような
なかなか味わいの深い体験をした。

その食堂はそんな町の辻にあった。
全体的に白らっちゃけ朽ち始めている
木造平屋だった。
屋号の書かれてある大きな看板は
文字がほとんど消えかかっており
どうにか読む事ができる程度。
しかも戦前の「右読み」であった。

波打つガラスの嵌った格子引き戸を
開けるとチープなパイプ椅子が散在し
板の薄いテーブルが二卓ほど
配置されていた。
お店には割烹着姿のお婆さんが一人。

おそらく食堂なのだが筆者はなぜか
ラーメンとライスを注文した。
出て来たラーメンのなんとうまかったことか。

しょう油の普通のラーメン。
おそらく業務用のタレとスープ、そして
カンスイ臭いちじれ麺、近所のスーパーで
買ったであろう鳴戸巻き、
桃屋のシナチク、貼り付いた海苔
どうにかぎりぎりひからびてないネギ、
各パーツ単体ではどうにもこうにも
成り立たないほどの酷さであるが
それがラーメンとして集まった時の
破壊力が尋常ではなかった。

おまけに、丼に盛られた大盛りの
冷えたご飯の鈍い輝き。
人工着色料で真っ黄色に染まっている
沢庵の漬け物が数枚、丸い小さい
醤油皿に横たわっている。

ご飯もスープも飲み干し完食。
飲み干したラーメンどんぶりの底には
体に悪そうな得体の知れない
砂利のような香辛料のようなアレが
ざらっと残っており、それを
僅かのスープとともに流し込む至福。


その二年後、再びT県K町を訪れた。
当然、目的はまたあのラーメンライスを
食べるためだった。ところが、そのお店は
既に閉店していたようだった。
さらにその数年後、三度訪れた時には
そのお店自体があとかたもなく消えていた。




ということをハタと思い出し、ググってみた。
それらしいものは見つけられなかった。




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