2020/11/17

(No.2586): 寡黙なゲール(第七話)


「ゲール、ゲールはいずこぞ」

「はは、ここに控えおりまする」

「おおゲールよ、ゲール、なんとまぁ恐ろしいほどに久しいのぉ」

「御意。 まったくそのとおりでござりまする。前回は、えーと、あれは確か、もう2年半も前のことになりましょうや」

「どうわぁえ、なんと! 強かにそんなに経つというのか」

前々回までも遡りますれば、それはもう5年とふた月も前と相成りまする」

「まことか、ゲールよ、わしはその間一体何をしておったのかの」

「光陰矢の如しと申しますが早いものでs」

「そんなことよりも、ゲールよ、11月の27日はどうするつもりぢゃ」

「は? 27日と申されますか?」

「そうぢゃ、どうするつもりなんぢゃ。どうするかをわしに言って聞かせてはくれぬかの、ゲールよ、どうするつもりなんぢゃと聞いておる」

「11月の27日でございますね。えぇーと、うーと、その日は金曜日でございますな、ちょいとお待ちくださりませぇ、もうこの辺りまで出掛かって参っておりますゆえ、えー、あああ、そうそう、そうでございます、あれですよね、あれ、デ、デウイでございますよね」

「ふふふふ、ゲールよ、少し長めの台詞で時間を稼ごうとしても無駄ぢゃ。幾たびも幾たびもわしは騙されんぞ」

「デウイのライブでございますな」

「なんぢゃ、その勝ち誇ったやうな物言いは」

「め、滅相もございませぬ。勝ち誇ったなどとわたくしなぞはそのやうなs」

「まぁよい。ゲールよ。しかしそちは間違えておるぞ。わしは言うぞ、声を張って勇しく言うぞ、デウイではない。デウイデリュタである」

「嗚呼、わたくしは、なんと、なんという過ちを犯してしまったのでせう。そうでしたデリュ田でした。どのようにお詫びを」

「ゲールよ。デリュ田ではない。デリュタぢゃ」

「ふおお、重ね重ね是非お手打ちに」

「称えよゲールよ、場所は渋谷ロフトヘブンぢゃ。エマルジョンさま、チャイナプルーブさまというエレクトロ・マスロック・テクノな名うてのミュージシャンの方々と共演するのぢゃ。しかもデウイデリュタのレコ発なんぢゃぞしかし君」

「なんとしたことでせう、これは行かねば成増まい」

「ゲールよ、なりますが成増になっておるぞ。 そうぢゃ、わしがまだ若かった頃、仕事で最重要客先の偉い人が沢山いる会議で配られた弊社の資料に「〜となります。」と書かねばならぬところを「〜と成増。」となっていて、その箇所の説明になったとき、笑いを堪えるに死ぬ思いをしたことがある。いや、マジでさぁ突然の東武東上線とか、何の笑ってはいけない選手権なの、とか目を疑ったよね、いや、実際我慢限界点超えちゃってさ「ぷ、ぷふう」と笑っちゃってさ、マジでもうその空気ったら今思い出しただけでも気が遠くなるよー」





「。。。はい?すんません、聞いてませんでした」

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