2016/03/19

(No.2443): 「伝拡鬼嚇電子音塊実態」裏神晃一郎 著


「あ々ちょいと君、失礼をするんだけれどもね、今君の読んでおられるその本は何と云ふ本なのかネ」
「此れですか」
「うむ、君が此のカフヱの一番の奥席にもう彼是長い時間をさうして休みなく読み耽っておるところを具に拝見しておったのだがネ、嗚呼失敬じつと見ていたわけではないから勘違ひしてもらつては困るヨ、此方も小新聞なぞをかうして読んではゐたのだが君の其の没頭振りを目の当たりにしてはネ、だうにもかうにも伺いたくなったてぇやつなんだヨ」
「此は”伝拡鬼嚇電子音塊実態”と云ふ本です」
「其れは又大層な題なのだネ、一体どのやうな事柄が書かれてある本なのかネ」
「実在した楽団の話です」
「楽団かネ、ははァ音楽楽団の微妙くも愉し美しひ物語と云ふわけかい」
「物語と云ふよりは寧ろ記録の類いです。提唱会と呼称された彼等の数多音楽外伝活動の履歴ですが何処迄が真なのか偽なのかわたくしにはとんとわかりません」
「要するに楽団に纏わる真偽の掴めぬ実話と伽話の交配と云ふわけだネ、それでゐてその本は誰の筆なのかい」
「裏神晃一郎と云ふ半世紀以上も前の工学者です、もう亡くなって久しいのですけれど」
「工学者が音楽楽団の記録をねェ、うらかみ、聞いたこたぁないがネ」
「彼は工学者でもあるのですが、旧フュティベ時代に軍の諜報機関の人だったやうです」
「そんな人物が楽団の記録なんぞをねェ、益々興味を沸く本だネ、其れで其の楽団は何と云う楽団なのかネ」
「デユーイと云ひます」
「デユーイ、知らん名だねェ、君、すまないが其の本を少し見せてはくれないだらうか、いや君の読書の邪魔をするつもりは毛頭ないのだがネ、ほんの数頁を眺めてみたい心持ちになったのだよ」
「ああイイですよ、さあどうぞ」


わたしは本を受け取ると無作為に頁をめくった。
その開かれた頁にはこう書かれてあった。



二〇一六年三月二十七日 日曜
大久保 ひかりのうま

「東京電極」
open 18:00 start 18:30
2000円+D

- ACT -
chinaprove
りすどらむ
ナカイワシタ(中井敏文+岩下達朗)
谷口マルタ正明+岩下達朗
dewey


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