2015/06/25

(No.2354): アンダーパスのできごと


乾燥納豆の美味しさに溺れるもその硬さでしこたま歯にくっつく仕様は珍味としての存在であり、手にとってその匂いを嗅げば正しく納豆のそれである。

この芳醇なる香りが堪らないので我が六級改号別名ducatim696之介に跨り、朝の井の頭通り左折後の甲州街道環七アンダーパスをいつもの通り四輪の後ろについて粛々と走る。
アンダーパス最深部からの登り口の上の測道にこちら側を下に覗き込む白バイ隊員一名の姿を認める。久しぶりに覗きこむ警官をみた。おそらく一斉取り締まりだろう。最近は見かけなかったが、以前何度もこの場所でやっていた。

アンダーパスは渋滞こそないが車両は上り二車線で数珠繋ぎ状態であり概ね時速20kmくらいでノロノロ走っている。我が六級改号別名ducatim696之介で時速20kmでノロノロ走ることはかなりテクニックを要する。この場合テクニックというのは二輪技能のそれだけではなく、交通ルールに沿った振る舞いのできる心のテクニックのことだ。
見たまえ、このわたくしの蟠りの中の低速走行の妙をうはッうはッとヘルメットの中で絶叫独り芝居をしていると、筆者の後方から夥しい排気音を轟かせて一台のビッグスクーターが走ってきた。
そのビッグスクーターは二車線間の黄色車線の上を真中走行して筆者を抜き、数多四輪をすり抜けしてそのまま前方へ走り去った。

ビッグスクーターの彼は上から白バイ隊員が見ていたことなど知る由もないだろう。きっとこの先で捕り物が始まるはずだ。半ばわくわくしながらゆるゆると坂を登り、登りきったところで信号待ちになったので停まってどれどれと観察した。

辺りは確かに一斉取り締まり風な塩梅で、路肩には白バイ数台がスタンバっていた。しかし、先ほどすり抜けしていったビッグスクーターの姿はない。捕まっていないではないか。

いやいやいやいや、上から見てたでしょ。あれを捕まえないで何を捕まえようというのでしょうか。あのあからさまなる進路変更禁止違反なのに。
捕まえられない事情が何かあったのかもしれないが、ちょいとがっかりした出来事。




おしまい。



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