2013/10/06

(No.2069): 1991年某ミックスダウンの現場(その一)


もう二十数年程前になるが
鎮Z録音技師の計らいで、中野の
某レコーディング・スタジオにて
行われているあるOVA作品の
サウンドトラックの制作現場に
お邪魔したことがある。

その日はミックスダウンであった。
筆者は当然商業レコーディング
スタジオなど入ったことはなく、
数千万円もするSSLのコンソールがある
と聞いていたのでどえらく緊張しながら
スタジオ入口の自動ドアを開けた。

しかし、その緊張の本心は平沢さんに
お会いするからだったのだ。
そのサウンドトラックは平沢進さんの
作品なのである。

鎮Z録音技師はSSLの正面に陣取って
その横にMTRを操作するアシスタントの方、
ディレクター席というか後方のソファーに
平沢さんや当時の事務所の社長さんや
レコード会社のディレクターの方などが
座られていた。
筆者は部外者にも関わらず、
社長さんやディレクターの方は大変親切で、
まぁまぁゆっくりしてってください的な
フレンドリーな応対をしてくださった。

鎮Z録音技師が筆者のことを平沢さんに
紹介する。すると平沢さんは
「あーあー打ち込み野郎ですね」
と、はにかみながら仰られた。
筆者はすかさず「御意、打ち込み野郎です」
と、はにかみながら応えた。

当時、筆者のヘアスタイルは
短髪ツンツンちょっとパンクっぽく、且つ
もみあげ水平のテクノカットであった。
(今でもさほど変わらぬ)
だから余計そんな野郎的な雰囲気
だったのだろうかと思う。
しかも当時筆者は28歳の若造。



商業スタジオで聴く大音響。
ミックスダウンで変わる音の変化に
筆者はしばらく恍惚となる。

平沢さんは漫画(週刊誌)を読んでいた。
と、思いきや、唐突に鎮Zさんに
もっとこういう感じでなどと指示をされるのだ。
例えば、「ディメンジョンを使わないで
もっと広がりをつけてください」
などと言ったりする。
(ディメンジョンというのは当時Rolandから
出ていた空間系エフェクタのこと)

そう言うと、また漫画を読んだり、サンレコを
読んだりしていている。
鎮Zさんがプレイバックして、どうでしょうと
お伺いを立てると、平沢さんは何やら
メモ用紙に書いて、それを鎮Zさんに渡した。

そのメモ用紙を見せてもらったら
そこにはこう描かれてあった。
平沢さんご自身の似顔絵(似てない)が
目を吊り上げて怒っている風な絵に
漫画の台詞吹き出しがあって、その中に
「ディメンジョンを使っていることは知っている」
と書かれてあった。


(続く)






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