2015/09/07

(No.2381): 隆起の丘にある便所扉の向こうは四畳半


わたしは再び訪れた。つい今しがた来たばかりだからまだそんなに時間は経っていないはずだ。
ここは楽器屋のビル。細長い建物。間口は一間ほど。入口は直接エレベーターだ。わたしは5階に行く。確かトイレがあるはずだ。5階で降りる。正面は店舗入り口だがそこには行かず、エレベータから出てすぐに壁伝いを左に行く。トイレを示す看板が天井から釣り下がっている。
薄汚れたリノリウムの廊下が昭和四十年代を想わせる。男子トイレに入る。


入ると正面には洗面台が三台設えてあり、一番左側の洗面台の前に和装の男性が立ってこちらを見ている。その男は灰色の着物を着ており、大きな黒い太い縁の眼鏡を掛け、髪を七三にきっちりと分けている。手を洗うでもなく、わたしをじっと見ている。

トイレの中は入って左方面に向かって地面が隆起している。リノリウムの廊下はその隆起の途中で不揃いに切れており、その先は土の地面が露出している。堅そうな土の地面だが便所故だろうか湿り気があるようにみえる。白いリノリウムの先に土の黒さが際立つ。

その隆起している左奥、つまりわたしが今立っているトイレの入口から入って、左後方の土の地面の上に大便用個室の扉が三枚並んで建っている。この趣はわたしが小学低学年の時分に見た小学校の木製の便所扉のそれだった。男トイレなのに小便器は一つも見当たらない。





洗面台の前に立っている着物の男の横を歩き、わたしは大便をするために一番右の扉を開けた。(全部「空き」だった)
大便扉を開けると中は大きな倉庫か体育館のような場所で、今自分が開けた扉の区画として四畳半ほどの畳が敷いてあり、その四方は縁側のように一段下がっておりその先は土間のようになっている。他の大便扉の区画はわからない。

その四畳半ほどの畳の中央から今入ってきた扉の方に向かって畳にUの字に溝がつけられており、どうやら排泄物はここを通して後方へ流すらしい。




わたしはその畳みの溝を跨ぐようにしゃがみ込んだ。

すると後ろから声が掛った。
「おい、身体を洗っちゃったのかね」

わたしは全裸になっており、得意げに応えた。
「洗ってないよ、だってほらぜんぜん濡れてないでしょ」

そう言いながらわたしは思った。そうなのだ、ここには水がないのだけれど、排泄物はどうやって流すのかしら、と。




6:03AM 猛烈な尿意で起床。


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