2024/02/03

(No.2651): クルマ奇譚(ホンダZ 編)

 前回のあらすじ



360cc専門店Kモータース店頭に並んだ紺色のホンダZ(初代)。
後部窓が「水中めがね」みたいな形で個性的。
ホンダN360の面影も残っているフロントマスク。いいなー。
試しに店長に聞いてみた。
スバルR-2を下取りにしたらこのホンダZどんな塩梅でしょうかと。
あまり記憶はないがたぶん10万円台だったと思う。
試しに聞いたはずなのにあれよあれよという間にホンダZを契約。

実はこの少し前、友人TがKモータースでホンダN III360を購入したのだ。
ホンダN III360はホンダN360の後期型モデル。
ぼくもその潮流に乗らせてもらいますという意気込みだった。


1986年12月。
忘れもしないホンダZの納車日は、祖父の葬式の日だった。
葬儀は自宅で執り行われた。

筆者は父親にこう言った。
実はね僕はこれからやんごとなき事情があってね
ちょいと出掛けようと思ってるんだ、いやすぐに戻るよ。
何を言っているこれから葬式なのにどこに行くのだ?
うんそれを聞かれるととても言いにくいのだよ。
お前何考えているんだ爺さんの葬式だぞ。
うむ葬式だ。

滞りなくホンダZ納車完了。
お爺ちゃんは笑っていた。


さて、ホンダZ。グレードや年式など記憶はないが
水冷エンジンだったので後期型だと思う。

そしてこの車で一番印象に残っているのは酷い雨漏り。
雨漏り車とわかったのは購入後だった。
特に顕著なのが特徴的な後部窓からの雨漏り。
「水中めがね」とはよく言ったもので
マジで水の中じゃん、
と面白くもない昭和の冗談を発するほどのひどい雨漏りだった。
落語じゃないけど傘じゃなくて箒をさしてるくらいにダダ漏れ。
おそらくだいぶ前から雨漏りしていたようで
後部シートをめくったら錆の侵食で鉄板に穴が空いていた。

車内にはタオルを常備していて、
雨のたびに後部窓のまわりにタオルを敷き詰めていた。
それでも正月に初日の出を見に茨城県まで行ったり
なんだかんだでそこそこ遠出もした。


ところが梅の花が咲くか咲かぬかの頃合いに電気系が故障した。
最初はバッテリーが弱ってきたのかと思ったが
どうやらオルタネーター(発電機)の様子がおかしい。

セルの回転が変だ、と気づいた時には手遅れで
這々の体で入庫した近所の修理屋さんで完全に沈黙した。
電気系不調はオルタネーター交換だけでは済まぬらしく
併せて閉口していた雨漏りも診てもらったが
完治するには車体購入価格よりも高い見積もりで撃沈。


1987年2月末、
なんとかならんものかとKモータースへ問い合わせた。
ちょうど程度の良いホンダN360が入ったんですが
見てみますか?
なんというタイミングなのだろう。
しかも友人TはNIII360に乗っていたので、
このN360と2台で走ったらそれは素敵なことになるに違いないと
短絡的に、否、
総合的に、且つ、
坂を転がるように、否、
登り坂を駆け上がるように
筆者はハンコをつくのであった。

結局ホンダZは3ヶ月乗ったかどうか。


ホンダN360編へ 続く


車歴参考年表






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