2016/02/18

(No.2434): あのデモテープ特集とかあの音の宿題とか


先日youtubeにて1982年や83年の坂本龍一氏 NHKFM サウンドストリート デモテープ特集を久々聴く。
1982年12月
1983年11月

当時多重録音(今でいう宅録)をやっていた若人はほとんどの場合他者のスキルがわからなかったし、ライブをやっていないベッドルームミュージシャンは発表の場が限りなく少なかった。そんな中でこの番組はそのどちらも叶う光明であった。
今改めて聴いてみると、放送された作品の選考基準が全くわからないほどのむちゃくちゃぶりだ。楽曲としてすんなり恰好いいと思える電子音楽もあるものの、本当に発散エネルギーのみで押し通すような作品まであり多種多様で面白い。ちなみにこの番組で放送された何人かは今では有名なミュージシャンの方もいらっしゃる。
そんな方々の作品は一聴して他者との違いが歴然としている。理論的な音楽完成度が高いというよりむしろ、音場作りの感性が感覚的に優れているのかなと思う。そのような感性は訓練で身につくものもあるのかも知れないが、天性に備わっているような気がしてならない。番組中の坂本氏のコメントにもあるがずっと聴けてしまう魅力があるのだ。



デモテープ特集を聴いていると満足な機材がない(楽器すらない)にもかかわらず独創的で迸る創造力を感じる作品が多く、稚拙(という表現も適切ではないだろうが)と思われる中にも何か快い疼きのような感情を得る。
であるからして機材自体での作品の優劣はないのだが、考えてみれば当時の我々の機材など屁のようなものばかりだったことを想い出す。だいたいシンセ(しかもモノフォニック)があるだけでも相当高級だった。録音はラジカセ一台一発録りは当たり前でちょっと良くて2台でピンポンとか。シンセ同様、MTRなどあったれば録音スタジオ級だった。あったれば。

筆者も82年頃はミニ鍵盤カシオトーン1台とカセットデッキ2台(中学時代に買ってもらったやつと親父のお古)、あとギター用エフェクタのフェイザー(組み立てキット)のみだった。

如実に投稿者の機材がわかる。ちゃんとMTRで多重録音している作品もあればラジカセ一発録りもある。テクノなのに(投稿作品はテクノ以外ももちろんあるが)シーケンサー無いし。当然全部手弾き。
リズムマシン=テクノという感覚だったのでBOSS DR55でもありゃもう興奮の坩堝だった。でも実際はドラムは雑誌とかを叩くだけとか。手で。
まあ、当時でもお金持ちはMC4とか買ってたかもしれないけど。(40万円くらいする)

16分音符でベースがデケデケデッデケとかを鍵盤で手動演奏して録音するの。しかもテープだから終りの方で間違えたら最初から録音し直すとか。それ考えるとDAWって魔法だ。

余談だが、筆者1983年(大学2、3年頃)に頑張ってRoland SH101(128音記録できるデジタルシーケンサ内蔵モノフォニックシンセ 現在も所有)、TASCAM234(4トラックカセットMTR)、同ミキサー型番失念(8IN 4OUTくらいの)など機材を買った。だからバイトしまくった。日雇いで手取り1万とか運送のバイトとS球場整理員など諸々。



1983年5月放送のデモテープ特集では、当時筆者の唯一のテクノ友達で且つライバルだったT君の作品が放送された。(残念ながらこの放送はYouTubeに見つからなかった)
毎回200通以上の応募がありその中から10作品ほどが放送されていたらしいのでなかなか狭き門である。実は筆者も地味に投稿していたのだが筆者の作品など箸にも棒にもかからなかったのは云うまでもない。放送後、T君にやったねースゲースゲーと謝辞を送りながら心は打ちのめされていたことを想い出す。


それから13年後。J-WAVE Pazz&jops 坂本龍一gut-on-lineという番組で、坂本氏が毎回音の題材・宿題を出してその音やMIDIデータを使って作品を作り投稿するというデモテープ番組があり、この第二回の1996年5月放送で筆者の作品は優秀10作品に選ばれた。ただし上位3作品程度が放送されただけだったので残念ながら筆者の作品は放送されなかった。でも坂本氏からは以下のコメントをもらった。


「音色がいいね!ちょっと変わった音楽だと思います。ブルースっていうか、ブギっていうか。ほんと変わってる。」

(原文ママ)


その作品はこちら。(音悪いけど)

曲名「BootSite」



使用機材は
Roland JUNO60
Roland SH101
Macintosh Classic on Cubase(MIDIのみのやつ)
TASCAM 38 (ハーフインチの8TRマルチ)
MACKIE1604 (卓 すげーこれ今でも使ってるわ)


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