2014/07/11

(No.2215): 岩の祭壇


曇天。
土手様、すり鉢状。
薮。
眼前には背の低い木々が節操無く
密集している。

自分のいる場所から、そのすり鉢状の
下の方へくだるには、木のトンネルの
ような鬱蒼とした林の中を通らなくては
ならない。
林というのは些か大げさでほんの
僅かの間だけ木の下に入る程度。
すぐに出口は見えている。
くぐるとすり鉢状のほぼ底。
砂利が敷いてある。
すり鉢状の底は周りを薮や背の低い
木々に囲まれている。

正面に建物。
建物といっても自然の岩を、
そうこれはだいぶ巨大な岩だ。
岩をくり抜いたような
しかし窓枠などの人工物も一緒に
設えてある、
そういう建物。

誰もいない。
自分一人しかいない。
だいぶ薄暗くなって来た。
少し怖い。
砂利を踏んでこの岩の中に入る。
入り口は扉も無い。
岩をくり抜いている感じ。
中に入ると、入ってすぐ左手に
祭壇がある。

天井や壁は自然の岩そのもの。
その正面の壁の岩が1.5m×2m、
奥行き50cmほどにえぐられており、
その中に祭壇がある。
しかし、祭壇という雰囲気はない。
奉る偶像も或いは鏡的なものもない。
ただ岩が削られているだけ。
四角く窪んでいるだけだ。

ではなぜ祭壇と思ったのか。
何故だろう。
よく見ると、その四角くえぐられている
中央より少し上の岩肌に黒い小さな点が
見える。この岩は玄武岩のようだ。
その模様かと思ったがそうではない。
その点を凝視するとその中に何か
動いているものをみとめた。
僅か1cmにも満たない点だ。
穴かもしれない。
向こう側に誰かいるのか。

虫か?とも思ったがそうではないだろう。
詮索はやめた。
というのも一刻も早くここを立ち去りたい
衝動が沸き上がって来たからだ。
何故か怖い。

早くお参りして帰ろうと思った。
いつもの願掛けをしようと思うのだが
なかなか思い出せない。
怖い。ここを、早くここを立ち去りたい。
絞り出すように願掛けを終わらせると
踵を返して、早歩きで外に出た。

刹那、最初の土手の上にいた。
途中の記憶はない。
すり鉢状の底はもう見えない。
木々に覆われているのか
霧なのか
薮の茂みなのか
判然としないが、
ここからでは見えない。



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