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「こっからなら八丁堀線の鍛冶橋から京橋、
桜橋、永代橋と行ってぇ、永代橋からぁ
千代田橋線に乗りけぇてよ、茅場町、日本橋、
呉服橋つう具合に走るってぇと、お次は土橋線に
乗りけぇて一つ目の新常盤橋で降りるんでぇ、
そっからは水道橋線に乗りけぇてよ
神田橋、錦町河岸とくるってぇ寸法だ」
「いやしかし君、神保町にじかに行ったが
よくないかい」
「旦那、話の下げまで聞いておくんない、
そいじゃあっしの懐のあんべぇがよくねぇんで」
「市電なんだから君の懐具合など関係はないのじゃ
ぁないかい」
「へっへっとにかく旦那、鍛冶橋からお乗りん
なってくだせぇ」
「君は僕が些かでも市電に詳細ではないことを
知って担ごうとしているのではないのかね」
「へっへっなぁに市電でささやかなお大臣ご遊覧って
心もちってなもんでさ」
「君騙したりしたらひどいよ」
「騙しなんかしませんや、ただちょいとばかりの
中抜きのための稼ぎでさぁ」
「中抜き!」
「いえもう半分頂戴しましたんで、ごめんなすって」
「ぬお」
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