2013/05/28

(No.1987): バイキングの軍師を呼ぼう


昭和三十年代によく散見した取っ手が窪んだ
円形の金具を持った襖。
建てつけの悪い所為でかけた指先の具合に、
思い切り勢いで開けようとしたものだから、
その指先の生爪を十分に剥がしながら
出血の類を生じ、はううははんと唸る。
そんな旧本館とはうらはらに近代的な
巨大ホテルの体をそこはかと醸し出しつつ
しかし一流観光ホテルには今一歩
成り切れない感をそこはかと醸し出しつつ
旧本館に隣接するこちらは昭和五十年代的
旧本館とは姉妹館での夕食バイキング。

そんな宿泊施設にありがちな、そうさ
いつものような可も不可もない
そんな夕食バイキング型式食事なのだろう。
そう思っていた。
しかし、それは見事に裏切られた。


宿泊施設におけるバイキング型式は数多
経験があるが、筆者は嘗てこれほど緻密で
高品質な美味しいバイキングを食べたことが
なかった。
上述の一流観光ホテルには今一歩
成り切れていない感などと記した自分を
罵りたい衝動にかられるほど
このバイキングに衝撃した。
一体一流とはなんだ。

ここのバイキングは、
コンテンツが豊富というよりも
一つ一つの味の質が高いという印象。
メニウの民度がすこぶる高い。
しかし、
けっして種類が少ないということはなく
少なくないのに一つ一つの完成度が高い。

和食と中華を主軸としながら職人による
その場で揚げる串揚げ、その場で焼く
うなぎ蒲焼系、などを周囲に配し、
その他スイーツ系、飲み物という一般的な
メニウも並ぶ。



先ず刺身をいくつか取って来て食べる。
一口食べて、「うめぇー何これ!」と絶叫する。
刺身、寿司といったものは目の前が海という
こともあり至って新鮮なのは当たり前としても
生臭さなど微塵もなく、それも素材の味が
素晴らしい。
しかも、いわゆるフツーのネタは少なく
魚に疎い筆者は初見のものが多く名前も
覚束ない。

次に「うなぎ釜めし」なるものをよそってきた。
一口食べて、「うめぇー何これ!」と絶叫する。
うなぎの加減が筆舌に尽くしがたい。
たかがバイキングなのになにこの美味さ。
嫌な油っぽさなどなく、ほくほくとして
ほくほくとしてほくほくとして
なにしろ後味が凄い。
流石本場のうなぎだ。
いや、この本場の地で数年前、所謂
うなぎ屋でうな丼を食べた事があるが、
そのうなぎ専門店のうなぎよりも
美味さのレベルは数段上だった。
ただしく尋常ではない。

赴きを変えて、餃子を食べる。
なんでも地元産B級グルメ的餃子らしい。
へ、そういうのが駄目なんだよと思った刹那
一口食べて、「うめぇー何これ!」と絶叫する。
ニンニクではなく生姜系と思われるが
白飯にこれほど合うのもそう多くはないだろう。

中華の流れで豚角煮を食べる。
一口食べて、「うめぇー何これ!」と絶叫する。
やわらかくて肉は口の中ですぐに形を変える。
そして味付けが絶妙だ。
美味過ぎる。
腹がはち切れるほど喰いたい衝動に駆られる。

海苔の佃煮。
一口食べて、「うめぇー何これ!」と絶叫する。
地元産だという。
この奥行き感はなんだ。なんだこの海苔の佃煮。
この海苔の佃煮だけで白飯三杯はイケる。
お土産に買ったほどだ。

串揚げ。
一口食べて、「うめぇー何これ!」と絶叫する。
たくさんあった串揚げから
豚肉を薄くして揚げたもの、
エビを揚げたものを頂く。
豚肉にはウスターソースを
エビにはタルタルソースを。
どれも絶品至極。
なんか下ごしらえが違うのか。



あと、カニ。足が比較的長いカニ。
型番不明。
筆者はカニが食べられないのだが
カニ好きならたまらんだろう。
喰い放題だ。
カニ足を山盛りでわさわさ喰っている
おっさんが多かった。

自分で作る鍋もあったのだが、
腹いっぱいで流石に食べられなかった。

うなぎの串焼き、肝焼き的なやつとか
タレで、塩で、とか。もうやめて。



普通、バイキングなれば、
手抜きというかやっつけ的な
そういう事態はだいししょいし
何かしらあるはずなのだ。

ところがだ、
ここのは、それが皆無だ。
妥協が一切ない。
その全てが美味いのだ。
そして何より、二食付き宿代は安価だ。
一万円でお釣りがくる。
これはちょっと異常だ。


ちなみに朝のバイキングも凄かった。





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