2009/09/03

(No.872): 窓のない部屋


十数年前、仕事でよく出張をしていた。
営業職ではないが、当時は
故あって出張することが多々あった。

今まで仕事として出向いた地は
仙台、郡山、水戸、前橋、川越、横浜、平塚、
静岡、名古屋、岩倉、奈良、岡山、広島、
北九州、福岡、鹿児島である。
ほとんど、一人の場合が多かったが
二名以上での出張もあった。

スーツ姿で初めて一人で
国内線飛行機に搭乗した時は
おお俺ってビジネスマンじゃんなどと
思ったものである。


出張は、いわゆる旅とは異なり、
好き好んでその地へ赴くことではないので
仕事以外の事前情報というものを
ほとんど知らないで行く。

出張先で仕事が終わると、
このあとどうですか、と酒の席に誘われることも
あったが、ほとんどの場合、
そんぢゃシツレイいたしやす
と、夕暮れの知らない街へ
一人溶けていったものである。

この瞬間が堪らなく好きだった。

初見の街を歩く。
もともと興味があってわざわざ訪れた
わけではなく、仕事という強制があって
はじめて訪れた地だから
特別、街の空気感というものが
じんわりと染み渡ってくる。

そうか、ここは味噌煮込みうどんが
有名なのか、と聞いたとしても

例えば、CoCo壱のカレー
例えば、吉野家の牛丼
例えば、街の中華定食屋
例えば、マクドナルド
に行く。
あたかも、その街で
暮らしているかのように。


街を歩くだけが楽しみではない。
ソッコウでビジネスホテルへ帰り、
部屋でだらだらと寛ぐ。
ロキロキするほど、
なんとも贅沢な話である。


福岡の時は、8泊9日出張だったので
一日だけ休みをもらって
レンタカーを借りて有明海までドライブした。


岡山の駅前ビジネスホテルの部屋は
畳が傾いていた。


鹿児島行きの飛行機はバスのような小ささで
鹿児島空港着陸時の急ブレーキで
後席のおっさんのカバンがビューンと
前方へ吹っ飛ばされた。


名古屋栄の某ホテルの部屋には
窓が一切なかった。









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