2012/12/17

(No.1870): 男三人旅の風


1984年頃、友人二人と筆者の三人で
一台のクルマでF県の温泉へ行く道すがらの話し。

本編の前に少し余談を。
我々の動線は一般のそれとは随分と異なっていた。
だいたい、当時温泉ブームなども特にない
そんな時代に、20歳代前半の若者が
爺さん婆さんしか入っていない湯治場などへ
赴くという行為を、
しかも温泉ガイドブック等にも載らないような
そんな見捨てられたような湯治場を
或いは観光温泉に成り切れなかった中途半端な
鉱泉を好き好んで赴くという行為を、
電子音楽をなびかせながら実行していたのだ。

だいたい、我々は東京からF県へ行くのでさえ
常套ルートなどは一切使わず、くねくねと
細い生活道路を巡りながら走った。
クルマといえば360ccの軽自動車が第一義だったが
場合よっては普通乗用車を使う場合もあった。
旅行の内容でまちまち。
この時は普通乗用車だったと記憶している。
そしてだいたい夜に出発することが多かった。
I県あたりで仮眠することもあった。

ここから本編。
この時もそうだった。
I県あたりでもう眠い。
しかし今回は三人だしクルマで寝るってのも
狭そうでイマイチだ。
どっか足を伸ばせて眠れる場所を探そうという
ことになった。
しかもふとんなんかもあれば申し分ない。

しかしもはや深夜3時半、普通の旅館では
無理だろうという時間。
やはりホテル系をと探してみるが
ここは山間、だいたい見当たらぬ。
すると、前方にホテルサインが見える。
ラブホテルだ。
(当時はラブホという言い方はなかった)
しかもホテル式ではなくコテージ風な
離れ式になっている。

うむ、離れ式なれば、
部屋に入っちゃえばこっちのもんだ。
いっそここに泊ろう。
おうーそうしようそうしよう男三人で。
その行為自体に爆笑しながらそろそろと
クルマで門から入ると、眼前に掘立小屋然
としたものがあり物干し竿のようなバーで
入場受付的なことをしているではないか。
従業員が一人もぎりよろしく待ちかまえている。

とっさに、後座席の友人が座席下に
うずくまる。

運転していた友人が(筆者は助手席だった)
もぎり人に一言。

「お、おとこ 二名なんですけど・・」
「はいーいいですよー3A棟どうぞー」


ぜったいモーホーだと思われた





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