2008/09/18

(No.569): 追憶のラジオ劇場の噺


ネットラジオというものがある。
インターネットでリアルタイム(若干の時差はあるが)にて
音楽やら音声やらを配信できる仕組みのことである。
文字通りインターネットを使ったラジオである。
ストリーミング放送などとも呼ばれる。
誰でも放送ができ、しかも不特定多数の人に配信できる。
全く凄い世の中になったものである。




筆者が中学生の頃(1976年前後)は深夜放送が全盛期であった。
深夜放送のDJ(ディスクジョッキー)に憧れていたりもした。
時代的にはパーソナリティという呼び方をされ始めた頃だろう。
それだから、当時、筆者の仲間内ではラジオ放送ごっこが
随分と流行っていた。

どういうものかというと、
録音できるラジカセを使って、カセットテープに自分達の放送を
録音するのである。
マイクに向かってしゃべり、音楽をかける時は一旦停めて、
レコードから音楽をテープに録る。

しゃべる内容は、学校のこととか、エロ話しとか
笑い話とかそんなどうでもいいことばかり。

ちゃんとCMも入る。
CMはホンモノのラジオから録音したものを
別のカセットから再生して、録音していた。

そのうち、ホンモノのラジオ放送とごっこ放送の
ある違いに気が付く。
ホンモノは音楽が流れている時にDJの声が重なることがある、
あれはどうやっているのだろうと思った。

調べると、ミキサーというもので音を混ぜているのだと知る。

その頃、筆者の家にあったステレオには
レコードの音と接続したマイクの音を混ぜてカセットテープへ録音できる
という、カンペキに理に適った機能が備わっていた。
そういう機能があることなど全然知らないで普通のラジカセだけで
やっていた。
ある時、その機能を偶然発見した。
そりゃもう嬉々として皆で大々的なラジオ放送ごっこを実施したものである。
土曜の夜に筆者家に集まり、夜を徹して放送ごっこをやる。
徹夜を初めて体験したのもこの頃か。


それから暫くして、FMトランスミッターというものの存在を知る。
微弱電波のFM送信が可能な機械である。
所謂ミニFM局である。無性に欲しくなる。
これがあればホンモノの「放送」ができると確信する。
科学技術に貢献するのだという意味不明な理屈で
親を騙してSONY製のFMトランスミッターを買ってもらう。
1万円くらいだったか。当時の価格で。

これにはミキサーも内蔵されており、レコードプレイヤーを
つなげれば、音と声をミックスして送信できた。
出力をラジカセに繋げれば、送信しつつ同時に
録音することも可能であった。

しかし、この機械の素晴らしいところは
なんといって、ホンモノの「放送」ができるところにある。
放送スケジュールを作成し、1日30分の糞のような放送をはじめた。
微弱電波なので半径100m程度までしか届かない。
(昔の免許不要の送信機は今よりも出力が大きかった)
電波が届くと思われる範囲で、町内会用の掲示板に
あろうことか手作りポスターまで張り出した。


そして、一ヶ月で飽きた。


ミニFM局ごっこも忘れ去られたある日、
友達の妹から町内会掲示板に張り出されていた、
けったいなポスターのことについて聞かれた。

「ってポスター貼ってあったの知ってる?
FMスタンの大放送って書いてあったんだけど、
「放送」の字が「枚送」ってなってんの、あはっ
何だったんだろーそんでスタンって何だろうー」

「・・なんだろう・・ね・・」

(註釈:スタンとは当時の筆者のあだ名をちょっとひねったものであった)







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