2011/05/18

(No.1394): 大連行履


昨年の8月、
中国の大連へ出張した。
三泊四日の期間であり、
且つ仕事だったため
観光的なことは全くなかった。

が、帰国日の朝、
朝食後出発まで3時間近く時間が
空いていたので一人ホテルを出て
街を歩き回った。
この時の点景が今でも心に
焼きついている。



大連の街は一見すると都会的で、
幅の広い道路や12、3階建ての
高いビルヂングなどもある。
しかし裏通りに一歩踏み入れば、
彼らの粛々とした日常生活があり、
彼らの常識の風景が広がっている。





生活道路と思しきそうした
狭い通りの両脇には商店などが
ひしめき合って密集している場所も
数多く存在し、そこには彼らの日常の
切り取られた朝が存在しているのだ。


ホテルから歩いて5分ほどのところに
中程に池がある大きな公園があり、
その中を散策する。

平日(確か金曜日)にも関わらず
たくさんの人々が集っていた。
目立ったのは、やはり太極拳を
舞っている人たち。
いくつかの集まりになって、
公園のあちこちで見かけた。


また、大きな筆を持って、
(筆なのだが全長50cmはあろうか
という長くて大きな筆)
立ったまま地面に漢字を書いている。
墨ではなく、ただの水のようだ。
そして、おそろしく達筆。
こういう集団も何組かいた。







彼らの毎日の日課なだろう。


あと、目についたのが床屋。
青空床屋とでも言えばいいのか。
公園のところどころに椅子をおいて
そこで髪を切っている。
屋外でのみ営業という風情。







公園を出て、裏道に行くと
早速猥雑な雰囲気の中に着く。
朝だというのにこのディープな
佇まいは何なのだろう。

実は昨夜、大連駅周辺の混沌とした
繁華街裏道なども徘徊していたのだが、
この時は上司と二人で行動していたので
夜のディープな裏道とはいえ
あまり危険は感じなかった。

一人とはいえ
この口ずさみそうな軽やかな朝にあって、
この街の佇まいの危ない感じは何だろう。

罅割れたコンクリートの階段に
汚れてねずみ色になって破れた
Tシャツ一枚で、
座り込んで中空を見つめている男。

その奥には、両腕の肩口まで刺青を
刺した男が、道端にしゃがみ
タバコをくゆらせて、さっきから
筆者のことを窺っている。

この路地のディープさに貢献しているのは
崩れた屋根や異臭を放つ水たまりや
割れた窓ガラスだけではなく、彼らの存在
こそがその度合いを上げているのだった。







彼らの周りにある人生も全て描かれて
この風景を作っている。

ポツポツと雨が落ちてきた。
突然豪雨になることがわかっていたので
慌ててホテルを目指す。

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