2011/07/06

(No.1436): 九本指譚


その矢を拾う者の指は九本だった。

その者は
オッホ・デ・マタの知的種のひとつ
ロダーネィである。
(学名ロダーネィ・リト・クミホ)

平均知能はヘリオス-c(地球)の
ホモサピエンスの6~8歳程度であり
DNAは99.978%同一といわれる。

言語、文字、道具を使用し、
ジュアムクという小さな社会を
多数形成している。
また、オッホ・デ・マタは
厳しい環境の所為か農耕技術は
あまり発達していない。
(摂氏マイナス130度の場所もある)
もっぱら狩猟でのみ生活を維持するが
近年、他圏からの知識流入により
一定の場所に定着するロダーネィも
多いという。
さらに文化的営みも盛んで、現在では
踊り、絵画、歌などが確認されている。

基本的にロダーネィは温厚で
平和主義である。
しかし、そのような温和な種であるにも
かかわらず、あるジュアムクに興味深い
伝説が残されている。




太古の昔、ある雌のロダーネィが
ヘリオス-cから来た者に捕獲され
連れ去られた。
ある大国の皇帝の后として嫁がせる
ためだった。

神と紙一重とまで言われたロダーネィの
血を受け継げば、未来永劫の繁栄が
約束されるのだ。
だから皇帝は后の言うことは何でも
聞き入れた。
国中を見渡せる建物が欲しいと言えば
尋常ではなく巨大な南単台を作らせたり、
奇物で部屋を一杯にしたいと言えば
民に重課税を科せ国中の珍物を集めさせ
宮室を奇物で埋め尽くすなど、
住まいから戯事、さらには人殺しまで
后が欲するままに何でもやった。

ロダーネィの寿命はホモサピエンスの
何十倍も長い。
従って、何代にも渡って皇帝に仕えた
という。しかし、ある呪術師による
訴えが元で、后は国を追放されてしまう。

追放された后は海を渡り、龍の形をした
隣国に逃れた。
その国でも帝の寵愛を受けることになり
居座るが、好き放題の果て国を滅亡
させようとした。

国家存亡の危機を知ったある侍と僧侶が
逃げる后を火山の麓まで追い詰める。
后は山肌の岩場で、噴出する硫黄ガスを
体中に浴び、石化して果てる。


このロダーネィのことを
ヘリオス-cでは「妲己」または「九尾の狐」
と呼んでいる。
また、この石化した石を「殺生石」と言う。






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