2012/11/21

(No.1852): ゴルシェの椅子の存在(三)


仮想の寂念を纏いつつ包涵された技巧に対し
御門違な点印を無表情で押されるお仕事です。




数年前のゴタゴタ再編時、喫茶店にて
当時同じ役職だったA君に「私」はこう言った。
僕らの役職が制度上からなくなっちゃって
だから役職ひっぺがされて当然給料減らされて
平社員になっちゃうっていうじゃない
ひどいよねー何か俺らがヘマやらかして
責任とらされるんならわかるけどさ
会社業績が悪いからってムチャクチャだよ

はーはーそうすね・・

ってAくんムカツカねぇの

い、いや、はーそうすね・・


という煮え切らない会話のしばらくあと
A君はピラピラになるどころか
前の役職よりも昇進していたのだった!

「私」は同じ役職の全員がその役職を
はく奪され減給され平社員に降格させられて
しまうというものだとばかり思っていたから
驚愕に打ち震えた。
と同時に
え?ってことは何かい昇進の決まっていた
A君に鼻の穴をおっぴろげて熱く語っていた
っていう「私」は一人で突っ走った挙句、
大穴に頭から落っこちて這いあがれない
とんだ間抜け野郎だったということかい。

そしてさらに蓋を開けてみれば役職をはく奪され
減給の汚名を着せられたのは「私」を含めてたったの
3人だった。
あとの同じ役職だった10人近い連中は皆
事実上昇進していたのだ。


「私」はその時想った。
ははぁこれが”淘汰”なのだと。

それでも「私」はモチベーションを落とさずに
妥協も一切せず真剣に仕事に取り組む姿勢を貫き通し、
見る者の笑いを誘い、
おいアレ見ろよあーはなりたくねーなーと
陰口をたたかれ、後ろ指を指され、
唾を吐きかけられ、足蹴にされ、
鼻くそをなすりつけられ、
靴をお舐め舐めないかこのブタ野郎ッと
罵られるという人生の選択肢を
選ぶ勇気が君にはあるかね。


1966年 スダエル・ワイガ・ヒニシス著
「ゴルシェの椅子の存在」(三章 はく奪の表情)より
抜粋編集




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