2011/12/11

(No.1573): 表敬民家


実は数年前からとても気になっている家がある。
五日市街道沿い東京都某所に存するある民家。

その民家を見る度に心が一際に落ち着くのだ。
うまく表現できないのだが、
強いてあげるなら「落ち着く」ともいえるし
「わくわくする」とも言える。
いずれにしても、非常に気持ちのよい気分に
してくれる民家、建物なのだ。
うむ。
そうだ、ともすれば「懐かしい」という心象を
伴っている事にも気付く。

その民家の構造は、おそらく昭和三十年代以前の
平均的な間取りなのではないかと思う。
一見すると、大工さん、或いは工務店のような
佇まいを見せる。
その民家の身なりはこうだ。

道に面して、ガラス戸が横並びしており
(このガラスも波打っている古いもの)
その内側が縁側然として三和土にもなっており
すぐ上は板の間と思われる。そして襖を隔てて
その奥には畳の居間らしき部屋がある。
しかも、特徴的なのは縁側然とした板の間の
端には急な階段がしつらえてあり、
上階へ続いている。
つまり所謂玄関はなく、くだんの板の間というか
縁側というかガラス戸の横並びというかが
つまり玄関の体をなしており、
しかも夜になるとそのガラス戸の横並びの
軒下に、丸い球状の白濁ガラスに電灯が一つ
灯っているのだ。

そういうわけで、ちょいちょいその民家前を
クルマやバイクで通過しているのだが、
たまたまそこを通っているだけなので
わざわざ停まって、じろじろ家の中を
覗くわけにもいかず、だから、上記の詳細な仕様は
この数年の間にそこを通過するほんの1秒足らずの
内に様々な情報を摂取しようと努めた結果なのだ。

筆者の勝手な想いとしては、どうかこの先も、
改築などをせずにあの佇まいのままで頂きたい
と願うばかりだ。
筆者にとってこれほど心安らぐ建築物はない。
なぜか無性に懐かしさが込み上げてくる。

いつだったか、ステテコ姿のおじいさんが
居間に座って一杯やっているところを
一瞬見かけたときは、あん時ぁ、
涙が出そうになった。
まるであの時代がそのまま
切り取られたかのようだったからだ。






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